釜炊きは何を見ているのだろうか。

 いよいよ寒さも本格的、今朝は麹室内28℃、外気温は-8℃でした。

お蔭様で年々麹の注文を頂く量が増えています。1工程内で効率化はできないので、工程と工程の間を詰めて対応しています。つまり絶え間なく休み無く大好きな仕事ができるということでしょうか。多くのご注文をいただき皆様に感謝いたします。

 

 私たちの作業場に甑「こしき」という蒸し道具があります。大釜の上にのせてグラグラと煮え立つ蒸気で米、大豆を蒸すのです。甑に米を入れて蒸気を当てれば蒸米はできるのですが、蒸気を変化させないと麹に適合した外硬内軟な蒸米になりません。

一般的に蒸気は「物質が液体や個体から昇華して気体になったもの」を指します。水蒸気は水が気化したものですから当然ながら湿度を含みます。湿度が多い蒸気では蒸米がべたつき飯米になってしまいます。水蒸気は、1、湿り飽和蒸気、2、乾燥飽和蒸気、3、加熱蒸気に分類され、外硬内軟な蒸米を得るには余分な水分を除いた2、乾燥飽和蒸気が必要となります。私達の作業場にはボイラーがありませんので、釜から上がった直蒸気を変化させる「猿」という仕掛けが甑の中に必要になります。文字通り「さる」といいます。この道具を使って乾燥飽和蒸気を得るのです。「さる」、人間が経験によって編み出した優れた道具です。この道具についてはまたの機会にご紹介したいと思います。

良い釜炊き番は竈の前で薪をくべ、寒いからといってぬくぬくと火に当たっていてはいけません。煙道から立ち上る煙の色を見て燃焼温度はどうか、蒸気は適した状態になっているのか、甑の保温はどうか等、そんなことを考えながら五感をフルに働かせて寒中作業をしなければいけません。

 

 

国際宇宙ステーションが暗い寒空に南西から北東へ2等級の明るさで通り過ぎていきました。人間が高度400㎞上空で様々な実験を繰り返しているそうです。弥生時代からある甑もどうやら経験則に基づいて変化し、ようやく今の形にあるようです。宇宙から見た人類の営みはどう見えるのでしょうか。「人間ちょぼちょぼやな」